日本SF展@世田谷文学館

日本SF展 世田谷文学館

 

 大人にとっても子供にとっても、そしていつの時代も、サイエンスフィクションは心を掴んで離さない永遠のあこがれだ。宇宙、未知の生命体、ロボット、超能力、怪獣、タイムトラベル。これらのワードにときめきを感じないだろうか?少年時代にめくった懐かしい本の記憶を、大人になったいまも単行本が出る度に買い続けているスペースオペラを、すこしふしぎな漫画を、思い浮かべはしないだろうか?世田谷文学館で行われた日本SF展は、そんなわくわくどきどきを存分に体感させてくれる展覧会だった。

 ところでわたしたち平成生まれの人間にとって、昨今の“エイティーズリバイバル”とも呼ばれる80年代若者文化の復興は、悔しくもありうらやましくもある現象だ。昨日最終話を迎えた「アオイホノオ」はその代表的な例で、雑誌アイデアの365号においても、イラストレーションにおけるエイティーズリバイバルが特集された。2000年代から享受し続けている漫画・アニメ文化の発展の土台がいかに豊潤であったか、思い知らされるばかりである。SFにおいてもそれは同じで、SFの黎明と称されるここ数年の作品の源流を遡ってみると最盛はエイティーズ――80年代にある。だが80年代文化の土台はどこで形成されたのか。その答えの一端が日本SF展なのだ。筒井康隆小松左京海野十三星新一手塚治虫円谷英二…。そうそうたるメンバーの創作の軌跡は、日本文化の盛栄の歴史ともいえる。日本SF学会が発足した際の資料に歴史の胎動を感じたり、先生のおちゃめなエピソードにニヤリとしたり。手書き原稿や走り書きのメモは、小さい文字に目をこらしてついつい読み込んでしまう。中でも星新一のメモ文字の小ささたるや、wordのフォントサイズでいうなら8、しかも行間0の癖文字でびっしり。その極まった世界に、SF心は興奮が覚めやらないのである。展覧会図録も、よいこの科学絵本をパロディしたつくりでとても凝っている。手元に置いておきたくなるような一冊だ。

 日本SF展は“復習”、つまり源流を遡り根幹を確かめる展覧会だ。すべてのジャンルにおいて膨大なアーカイヴが存在する21世紀では、復習という行為すら難しい。体系化されていないもの、記録不可能だったものはもはや伝えられることすら困難だ。だがSFにはたくさんの支持者とアーカイヴ者がいた。それが80年代に若者だったひとびとである。一度は“死んだ”とまで言われたSFが生き返ったのは彼らの尽力もあってのことだろう。

 これまでのSFも、これからのSFも、手を取り合って互いに世界を広げていってほしい。それが、少年少女(だった者)たちの願いなのである。

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