21_21 DESIGN SIGHT「活動のデザイン」

21_21 DESIGN SIGHT「活動のデザイン」

 

 クリティカル・デザインという言葉をご存知だろうか。社会を俯瞰し、新しいまなざしを向けて問題解決の糸口を発見する、極めてソーシャルなデザインを指す言葉である。今回21_21 DESIGN SIGHTで行われた「活動のデザイン」展は、“活動”(プロジェクト)という形態にフォーカスした、クリティカル・デザインに関連する展示だ。また、そうして思い出すのは、2013年に東京都現代美術館で行われた「東京アートミーテイング第4回 うさぎスマッシュ 世界に触れるアートとデザイン」展だろう。こちらはより“アート”にフォーカスしており、作品・作家性、思想性が強い。ちなみに共通して出展している作家は牛込陽介氏である。

 「活動のデザイン」展は、社会的な問題や日常におけるひっかかりを、スマートかつユニークに、堅苦しくなく読み解くプロジェクトを紹介している。フライヤー全面に載っているDNA Charlois&クリスティン・メンデルツマの活動は、81歳のロースさんという女性が、60年間編み続けては屋根裏に放り込んでいた500枚以上のセーターを記録するというもの。その行為をたたえて、セーターを着たフラッシュモブによるパフォーマンスも行った。ところでこのプロジェクト、ヘンリー・ダーガーを思い起こさないだろうか?小さな教会の清掃夫であったヘンリー・ダーガーは、孤独に執筆した15000ページにも及ぶ超巨篇小説挿絵付きを死後発見され、結果的にその名前はアウトサイダーアーティストとして定着した。ダーガーの出来事は、彼の社会との関わりの薄さ、コミュニケーションに関する問題が大きく、隣人ですら彼の創作を知らなかった。生活の中に隠れたアーティストを見つけ出し、その行為を応援することは、社会との新しいつながりの提案であり、また双方にとっていい影響を与える面が大きいだろう(もちろん与えない場合もある)。

 クリティカル・デザインという分野に関連する展覧会の特徴は、作品を理解するのに特別な知識が必要ない、ということである。美術史や、芸術作品の価値、思想に関する事前知識はほとんどいらない。どの作品も、社会的な問題に対して非常に具体的かつ真摯に、デザインによる解決を図っている。よほど世界や社会に関心のない人間でない限り作品の背景事情―つまりは社会背景を知っている。だから老若男女すべてに親しみやすく、個人がピンとくる作品も見つかりやすいのだ。デザインミュージアムのない日本で、これらのようなデザインに関連する展覧会が行われることは決して多くはない。だがこうして確実に増えている。クリティカル・デザインはテクノロジーと発想に支えられている分野であるが、だからこそ、美術分野に限定せずひとびとの心を捉えることができるのだろう。

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